SNSで得た収益に関連する税金について

2024年9月2日

SNS（ソーシャルネットワーキングサービス）は、現代社会において、個人から企業まで幅広く利用されています。情報の発信や共有、そしてビジネスチャンスを創出する場として、SNSの影響力は年々増大しています。しかし、SNSを利用して収益を得る場合、その収益に対する税金が発生することを認識しておかなければなりません。本記事では、SNSで得た収益に関連する税金について、一般消費者が理解しやすい形で詳しく解説します。

SNSを利用した収益活動とは？

SNSを利用して収益を得る手段は多岐にわたります。これらの活動は、個人の趣味や特技を生かしたものから、本格的なビジネスモデルに至るまで、非常に多様です。具体的な収益活動には以下のようなものがあります。

アフィリエイトマーケティング: アフィリエイトとは、自身のSNSアカウントで特定の商品やサービスを紹介し、そのリンクから購入が行われると、紹介者に報酬が支払われる仕組みです。たとえば、ファッションブログやレビューサイトを運営する個人が、特定のブランドの衣料品を紹介し、その紹介経由で購入が発生した場合に報酬を得ることができます。この手法は、初心者でも比較的取り組みやすい収益モデルとして人気があります。
インフルエンサー活動: インフルエンサーとは、多くのフォロワーを持ち、その影響力を利用して商品の宣伝を行う人々のことを指します。企業がインフルエンサーに商品やサービスを提供し、彼らがSNS上でそれを紹介することで、企業は宣伝効果を得られ、インフルエンサーはその対価として報酬を得ることができます。このようなビジネスモデルは、特にInstagramやYouTubeといったプラットフォームで広がりを見せています。
コンテンツ販売: SNSを通じて、自身が制作したデジタルコンテンツを販売することも可能です。例えば、オンライン講座、電子書籍、イラスト、音楽などがこれに該当します。デジタルコンテンツの販売は、SNSを通じて自分の作品を広く宣伝できるため、クリエイターにとって大きな収入源となることがあります。また、販売するコンテンツが一度作成されれば、後はSNSを通じて繰り返し販売できるため、効率的な収益モデルとしても注目されています。
スポンサーシップ: スポンサーシップは、企業が特定のSNSアカウントと契約し、そのアカウントを通じて広告やプロモーションを行う形態です。インフルエンサーとは異なり、スポンサーシップ契約には長期的なパートナーシップが含まれることが多く、定期的に報酬が支払われる場合があります。例えば、あるスポーツブランドが特定のアスリートやフィットネスインストラクターとスポンサー契約を結び、その人物がSNSでブランドのアイテムを紹介し続けることで、継続的な宣伝効果を狙うといったケースが考えられます。

これらの収益活動は一見、自由で手軽に思えるかもしれませんが、すべて所得として扱われるため、税金の問題が生じます。個々の活動がどのように所得税に関連してくるのかを理解することは、収益活動を持続的に行うために非常に重要です。

税金の種類とSNS収益

SNSを通じて得られる収益には、様々な税金が関わってきます。収益を得た場合、その収益に対してどのような税金が課されるのかを理解しておくことは非常に重要です。ここでは、代表的な税金の種類について詳しく説明します。

所得税: 所得税は、個人が得たすべての所得に対して課される税金です。所得税の課税対象となる所得は、給与所得や事業所得、そしてSNSを通じて得た収益などが含まれます。SNS収益は、基本的に雑所得として扱われることが多いですが、副業として行っている場合は事業所得として扱われることもあります。所得税は累進課税方式を採用しており、所得が高くなるほど税率が上がります。したがって、SNS収益が増えるほど、納税額も増加する可能性があります。
消費税: SNSを通じて商品やサービスを販売する場合、消費税が課されることがあります。特にデジタルコンテンツを販売する場合、販売額に対して消費税が課税されます。消費税は、消費者が商品やサービスを購入する際に支払う税金であり、販売者はその消費税を税務署に納める義務があります。消費税の税率は国によって異なりますが、日本では2024年時点で10%となっています。
住民税: 住民税は、個人の所得に応じて地方自治体に支払う税金です。SNSを通じて得た収益も、住民税の対象となります。住民税は所得税と異なり、所得に応じた定率課税が採用されています。住民税の税率はおおよそ一律ですが、自治体によって若干の違いがあることがあります。所得税の確定申告を行った際には、住民税も同時に計算され、後日納税通知が届く仕組みになっています。

SNS収益に関する税務申告の必要性

SNSを通じて得た収益が一定額を超える場合、確定申告が必要となります。確定申告を行うことで、適切に税金を納めることができ、将来的なトラブルを防ぐことができます。ここでは、税務申告の必要性とその手順について詳しく説明します。

雑所得としてのSNS収益: SNSを通じた収益は、通常「雑所得」として扱われます。雑所得とは、給与所得や事業所得、その他の所得に該当しない収益のことを指します。具体的には、アフィリエイト収益やインフルエンサー活動で得た報酬、デジタルコンテンツの販売収益などがこれに該当します。雑所得の年間合計額が20万円以上になる場合、確定申告が必要です。

確定申告の手順: 確定申告は、毎年2月中旬から3月中旬にかけて行われます。申告期間中に、前年の収入と経費を整理し、所得税や住民税を計算します。申告は税務署に直接提出するほか、オンラインで行うことも可能です。オンライン申告（e-Tax）を利用すると、手続きが簡素化される上、提出期限が若干延長されるメリットもあります。

申告を怠った場合のリスク: 確定申告を行わない場合、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。無申告加算税は、申告を怠った場合に課されるペナルティで、所得に応じて最大20%の加算税が課されることがあります。また、延滞税は税金の支払いが遅れた場合に課されるもので、日数に応じて課税されます。これらのペナルティを避けるためにも、収益が発生した際には必ず申告を行うことが重要です。

SNS収益の経費として認められるもの

SNS活動に関連する支出の中には、税務上「経費」として認められるものがあります。経費として認められる支出を差し引くことで、課税対象となる所得を減らすことができ、納税額を減らすことが可能です。以下に、SNS収益に関連する主な経費を詳しく解説します。

通信費: SNS活動に欠かせないインターネット接続費用や、モバイルデータ通信費用は、経費として申告できます。例えば、スマートフォンやパソコンを利用してSNSを運営している場合、それにかかる通信費が経費として認められることがあります。ただし、個人利用と業務利用が混在している場合は、その割合を考慮して経費として申告する必要があります。
機材費: SNS活動に必要なカメラ、パソコン、スマートフォン、マイクなどの機材費も経費として申告できます。これらの機材は、高価なものが多いため、購入費用を経費として計上することで、所得税の節税効果が期待できます。また、機材が高額であればあるほど、減価償却という形で数年間にわたって経費として分割計上することも可能です。
取材費・交通費: SNSのコンテンツ作成に関連する取材や、イベント参加にかかる交通費や宿泊費も経費として認められます。例えば、インフルエンサーが新商品の発表会に出席し、その様子をSNSで紹介する場合、その出席にかかる交通費や宿泊費が経費となります。また、取材のために他都市への移動が必要な場合、その移動費用も経費として計上可能です。
広告費: SNSでのプロモーション活動にかかる広告費用も、経費として申告できます。例えば、InstagramやFacebookで自分の投稿を広告として配信する場合、その広告費が経費となります。広告費は、ビジネスを拡大するための重要な投資であるため、適切に計上することで税務上のメリットが得られます。

経費として申告するためには、支出の証拠となる領収書や明細書を適切に保管し、後で税務署に説明できるようにしておくことが重要です。また、経費として認められるかどうかは、その支出がSNS活動に直接関連しているかどうかが判断基準となるため、不明な場合は税理士に相談することをお勧めします。

税務申告を怠るリスク

SNSを利用した収益活動が増える一方で、税務申告を怠ることによるリスクも存在します。確定申告を行わない、あるいは収益を過少申告することは、将来的に大きな問題を引き起こす可能性があります。ここでは、申告を怠るリスクについて詳しく説明します。

税務調査とペナルティ: 税務署は定期的に税務調査を行い、収入の申告漏れや過少申告がないかを確認します。もしSNS収益を申告せずに隠してしまうと、税務調査で発覚した際に、無申告加算税や延滞税が課されることがあります。無申告加算税は、収益を申告しなかった場合に課されるペナルティで、所得に応じて最大20%の加算税が課されます。また、延滞税は税金の支払いが遅れた場合に課されるもので、遅れた日数に応じて課税されるため、支払い額が大幅に増加する可能性があります。

過去の申告漏れに対する追徴課税: もし過去にさかのぼって申告漏れが発覚した場合、税務署は追徴課税を行うことがあります。追徴課税とは、過去の申告漏れに対して未納分の税金とともに利子に相当する延滞税を支払わなければならないことを指します。この追徴課税は、発覚した年数に応じて課されるため、長期間にわたる申告漏れがあった場合、非常に高額な税金を一度に支払うことになるリスクがあります。

信頼の損失: 税務申告を怠ることは、ビジネスにおいても大きなリスクとなります。特に、SNSを通じてビジネスを展開している場合、税務問題が発覚すると顧客や取引先からの信頼を失う可能性があります。また、税務問題が公になることで、SNS上での評判が悪化し、フォロワーの減少や収益の減少につながることも考えられます。信頼を損なわないためにも、適切な税務申告を行うことが重要です。

SNS収益における注意点

SNS収益に関する税金を適切に処理するためには、いくつかの重要な注意点があります。これらの注意点を理解し、実践することで、税務問題を未然に防ぐことができます。以下に、SNS収益における代表的な注意点を詳しく解説します。

収益の記録: 収益が発生した際には、その記録を詳細に残すことが重要です。収益の入金日や金額、支払元を記録し、後で確認できるようにしておきましょう。例えば、アフィリエイト報酬が発生した場合、その報酬がどのプラットフォームから支払われたのか、入金日や金額がいくらだったのかをきちんと記録することで、確定申告時に正確な申告が可能になります。また、複数のプラットフォームから収益を得ている場合は、それぞれの収益を個別に管理することも重要です。
経費の管理: 経費として申告するためには、適切な管理が必要です。経費に関連する領収書や明細書をきちんと保管し、支出内容がSNS活動に関連していることを証明できるようにしておきましょう。例えば、SNS活動に関連する機材を購入した場合、その購入費用が経費として認められるためには、領収書が必要となります。また、経費として認められるためには、支出がSNS活動に直接関連していることを証明する必要があります。不明な場合は、税理士に相談して正確な申告を行うことが重要です。
税務署との連絡: もし収益や経費について疑問がある場合は、早めに税務署に相談することをおすすめします。税務署の職員は、適切な申告や税務処理についてアドバイスを提供してくれるため、不安や疑問がある場合は積極的に相談することが重要です。また、税務署に相談することで、将来的な税務問題を未然に防ぐことができます。例えば、収益が複数の所得に分かれる場合や、経費の計上方法に迷った場合など、専門的なアドバイスを受けることで、正確な税務処理が可能になります。

SNSと税務知識の今後の展望

SNSを通じた収益活動は、今後ますます増加していくと予想されます。これに伴い、税務に関する知識もますます重要となっていくでしょう。特に、インフルエンサーやアフィリエイター、デジタルコンテンツ販売者など、SNSを活用して収益を上げる人々にとっては、税務に関する適切な知識を持つことが不可欠です。

さらに、税務署側でもSNS収益に対する監視が強化される可能性があります。近年、税務署はインターネット上での取引や収益活動に対する監視を強化しており、特にSNSを通じた収益活動に対しては、今後ますます厳しい監視が行われると予想されます。これにより、収益の申告漏れや不正申告に対する取り締まりが厳しくなることも考えられます。そのため、今後はより一層、SNS収益に対する適切な税務処理が求められることになるでしょう。

また、税務に関する法改正や新しいガイドラインの策定が行われる可能性もあります。これにより、SNS収益に関する税務処理の方法が変わることが予想されます。そのため、最新の税務知識を常にアップデートし、法改正に対応できるように準備しておくことが重要です。税務知識を深めることで、SNS収益活動をより効果的に進めることができるでしょう。

まとめ

SNSを通じた収益活動は、個人でも手軽に始められる一方で、税金に関する知識が欠かせません。所得税や消費税、住民税などの基本的な税金の知識を身につけ、適切に申告を行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。また、収益に対する経費の管理や、税務署との適切なコミュニケーションを通じて、正確な税務処理を行うことが重要です。

税務処理に不安がある場合は、税理士や専門家に相談することも一つの手です。専門家のアドバイスを受けながら、正確で安心できる税務処理を行い、SNS収益活動をより効果的に進めていくことが求められます。今後もSNSを利用した収益活動が拡大する中で、適切な税務知識を持ち、将来的なトラブルを回避するための準備を進めていきましょう。